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アンケートと倫理審査と学会発表

この後に並ぶ「いざ、倫理審査」を書いた、すご~く後にこれを書いています。

追加の内容という事ですね。

 

実は、これを書いている2019年5月24日の少し前、当年度の日本薬剤師会学術大会(第52回)へ演題登録するため色々と過去の抄録集を確認していて思ったのですが…

 

アンケート調査の多い事、多い事。

もちろん、私自身も今までアンケート調査が主流だったので、アンケートを行っていない研究は今回を含めて2~3個しかないのですが。

 

その中で特に気になったのが、患者に対して行った薬局満足度に関するアンケート調査や、薬局で行っている特定の事業・サービスに関する満足度(アンケート)調査です。

もちろん、それらの内容を元に業務改善を行うのは素晴らしい事だと思います。

ただ、それを研究結果として学会発表に用いる場合は、条件が追加で発生する…という事ですね。

 

その条件とは、ズバリ!

倫理審査の承認を得ているかどうか、です。

 

昨日、Facebookにて教えて頂き自分の中でもイメージが固まったばかりの内容ですが、大前提として「回答者に倫理的配慮がなされているか」がポイントになるそうです。

ですので、理想を言えば薬局の満足度調査のためのアンケートで、その結果を社外に出さないとしているものであっても、倫理審査の承認を受けるべきと考えます。

 

ただ、倫理審査自体が申請する側も審査する側も大変であったりするので、現状は「倫理審査は受けるべきだけど、まあ…十分な倫理的配慮のもと自施設内でデータを管理して結果等も外に出ないなら、仕方ないかな」という位置づけだと思います。

 

なぜこの話になったかと言いますと、私自身が「倫理審査が必要ない研究」の条件をイマイチ分かっていなかったからなんです。

インターネットで「倫理審査 不要 研究」で検索してHITした文書から引用します。

 

①‌人(試料・情報を含む)を対象とする医学研究(疾病の原因,発症,影響の理解,予防,診断, 治療行為の改善)以外の研究(論文報告・学会発表を含む)
  • 職員に対する教育・アンケート及び施設の業務改善の評価に関する研究又は報告
    新人教育の成果の評価や院内感染対策の一環として行われるものなど.
なお,個人情報が保護されていること及び非人道的な質問・調査がないことが条件となる.(第 65 回日本アレルギー学会学術大会 演題登録ルール)

いかがでしょう?

倫理審査が不要とされるもののうち、論文研究・学会発表に供して良いとされているものの詳細として「職員に対する教育・アンケート及び施設の業務改善の評価に関する研究又は報告」が示されているんです。ということは、学会発表のために患者満足度アンケートを患者を対象として実施することも…と考えたくなりますが、どうやら違うようです。

やっぱりここだけ見ると、今でも混乱しますね。

より自分に厳しくしておいたほうが余計な摩擦は生じなくて済みますので、ここはもう少しシビアに解釈しておいた方が良いと考えます。

 

そして重要な事実をもう一つ。

発表先の学会によって、「倫理審査を不要とする研究」の定義の細部が異なるようです。

これにはビックリというか、ビビリました。だって、厚生労働省が定めたものであって解釈のレベルが違うなんて考えてもいませんでしたし、そもそもどの学会HPでも解釈を見たことがないんですから(探そうとしなかっただけですが)。

例えば、症例報告も倫理審査は不要と言われていますが、日本消化器外科学会の「人を対象とする医学系研究において倫理審査が不要な研究(概要)」では次のように定められているようです。

各施設の規定に従って判断する必要があるが,本学会では,研究対象総数が 9 例以下であれば症例報告として倫理審査を義務付けない.

え~と、複雑ですね。10例以上だと、学会によっては倫理審査が必須とされるということです。

症例報告は倫理審査不要とされる某学会で発表予定だったけど、事情により出来なかったので別の学会で発表しようとしたら、症例数と倫理審査未承認を理由に採択されなかった…なんて事が、普通にあるのかもしれません。

 

まとめになるか分かりませんが、一応現時点では

  1. 社内アンケートや患者満足度アンケート等であっても、結果を自施設以外で発表しなくても、「ヒト」を相手にアンケートやデータを取るなら、倫理審査を受ける方が無難
    (無難という表現もある通りケース・バイ・ケースなので、常識の範囲内で判断するしかない)
  2. 倫理審査を通していない上記アンケート結果は、学会発表等には用いない
    (用いるには、解析等について改めての倫理審査が結局必要になるとかならないとか…)

と考える方が良いように感じています。

 

 

以降はちょっと話がズレます。

私自身が第52回日本薬剤師会学術大会へ演題登録を行うにあたり、過去の抄録を確認していた事は冒頭お伝えしました。ある単語や内容を、第43回大会から第51回大会まで検索して、HITした演題を虱潰しに確認していったのです。流し読みのレベルに近いですが、それでも1000題近いです。

 

その過程で思ったこと。

それは…構造化抄録という点もですが、倫理審査の承認を得た事実を記載している抄録は、読みやすく理路整然としていて内容も濃く美しかったという事です。

 

倫理審査を受けるにあたり、色んな指摘とともに数多くのことを学ばれているのだと思います。私も審査を受ける度に目からウロコの経験をさせて頂いてます。倫理審査を担当する審査員も、「審査ができる」レベルの方が担当されるはずですので、言わば先輩研究者です。その方から教えてもらっているのと同じですよね。

という事で、倫理審査はできるだけ受けるようにしておきましょう。自身のスキルアップのために。


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